戦略を練る画像

カスタマーエクスペリエンス(CX)が日本で浸透して久しいですが、未だにフワッとした概念として捉えていませんか?

カスタマーエクスペリエンス(CX)は、IT化により、競争優位の”コモディティ化”が早くなってきた現代の市場環境での突破口となる考え方です。

カスタマーエクスペリエンス(CX)を推進できない企業は今後生き残れない可能性すらあります。

また欧米では2000年ごろにCXの考えが広まり、多くの企業が採用しているという現実があります。

この記事では、2018年東洋経済新報社 より出版された『CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略―顧客の心とつながる経験価値経営』を参照しながら、カスタマーエクスペリエンス(CX)の具体的な実践方法をみていこうと思います。

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、「顧客体験」と訳され、サービスの購入から利用、その後のサポートに至るまで、顧客が自社の商品・サービスと関わる中で、得られる価値のことです。

『戦略顧客の心とつながる経験価値経営』によると、カスタマーエクスペリエンス(CX)のポイントは「心理的・感情的な価値」を提供することとされています。

機能や性能の差が企業間で小さくなった今、企業は顧客に対して心理的。感情的な価値をサービスに加えていく必要があるということです。

カスタマーエクスペリエンス(CX)の具体的実践方法の前に、前提を少しおさらいしておきましょう。

優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)のメリット

 優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)には、企業の収益に大きく貢献する以下のようなメリットがあります。

・ブランドイメージの向上
・リピート顧客の獲得
・顧客離れの防止
・既存顧客による口コミ・宣伝

逆に言うと、列開くなカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供していると、商品・サービスの性能や質が他社と同じでも、顧客からより悪い印象・評価を受けることとなります。

分かりやすく例えると、居酒屋で同じような料理を提供するお店の中で、接客態度が良い店Aと悪い店Bのどちらに行きたいですか?と言う話です。

明白ですね。当たり前のことを述べていますが、それを意識的に戦略の軸とすることが非常に大切なのです。

カスタマーエクスペリエンス(CX)の種類

心理的・感情的な価値の種類。

カスタマーエクスペリエンス(CX)のポイントは「心理的・感情的な価値」を提供することだと述べましたが、バーンド・H・シュミット氏の『経営価値マネジメント』(嶋村和恵・広瀬酒一訳、ダイヤモンド社、2004年)によると、この価値は4つの種類に分類されます。

①Sense(感覚的体験価値)

②Feel(情緒的体験価値)

③Think(創造的体験価値)

④Act(ライフスタイル的体験価値)

⑤Relate(準拠集団や文化との関連づけ)

余談
CXとよく似た表現に「顧客満足度(CS)」があります。よく店舗営業で使われる言葉ですが、CSは、顧客の不満を解消することに焦点を当てています。CXはその概念をさらに拡張させ、顧客ロイヤリティを獲得していくことを目的としています。

 

カスタマーエクスペリエンス(CX)戦略の進め方

カスタマーエクスペリエンス(CX)の前提をおさえた上で、実践方法を見ていきましょう。

カスタマーエクスペリエンス(CX)の実践は特段テクニカルなことはありません。

当たり前のことを当たり前にやるだけと言えばそれまでです。突飛なことはありませんので、「なんだ、こんな感じで良いのか」と思って見てもらえればと思います。

カスタマーエクスペリエンス(CX)を現場レベルで実践していくためには、①導入②普及③発展の3つのプロセスを踏んでいきます。

①導入

まず導入です。導入段階では、社内でカスタマーエクスペリエンス(CX)を取り入れていくことを意思決定します。

その際、「経営陣が主導する」場合と「CS組織が経営陣を説得する」場合があります。

(CS推進組織が主導する場合)経営陣への理解納得

現場ベースでカスタマーエクスペリエンス(CX)の重要性を理解し、社全体で取り組もうとするには、経営陣への理解および説得が必要です。そのために必要な場のセッティング、理解してもらうのに必要な情報とわかりやすい説明など、手間暇がかかります。

いつの時代も下の人間が上の人間を説得することは難易度が高い行為であります……。

下の人間から乗り越えた先には大きな成果が生まれると思います。

(経営陣が主導する場合)CX推進組織の編成

カスタマーエクスペリエンス(CX)を経営陣が主導する場合は、説得するという一手間を省略することができるので、かなりスムーズに進めることができます。

まず行うことは「CX推進組織」の編成です。プロジェクトを推進できる腕力を持ちかつ、信頼のおける執行役員クラスの人選が必要となるでしょう。

顧客ロイヤリティ調査方法を設計し実施する

 組織を編成した後は、カスタマーエクスペリエンス(CX)を向上させるために、顧客ロイヤリティ調査方法を設計し、実施していきます。

ここではざっくりと紹介しますが、顧客ロイヤリティとは、顧客が自社の商品やサービスに対して抱いている「信頼」や「愛着」のことを指します。

顧客ロイヤリティ調査をし、そこで得られた結果を整理し、改善点を分析していくことがカスタマーエクスペリエンス(CX)のスタートです。

調査方法の代表的なものとして「NPS(ネット・プロモーター・スコア)」があります。

「あなたはこのサービスを家族や友人に勧める可能性はどれくらいありますか?」と言う1つの質問をし、顧客に10段階で選択させると言うものです。

「NPS」はかなり有名になってきました。答えたり、見たりした人もいると思います。

10点と9点が推奨者、8点と7点が中立者、6点以下は批判者と区分して、「推薦者の割合ー批判者の割合」から算出される割合が「NPS」と言うわけです(意外とこの式まで覚えている人が少ない印象)。

その他には、顧客との接触・取引ごとにアンケートを実施する「トランザクショナル調査」や1ヶ月や1年などの定期的な周期でアンケートを実施する「リレーショナル調査」があります。

まずは、これらのような顧客ロイヤリティ調査を実施します。

調査結果を整理し、カスタマージャーニーマップ化

集まったデータを数値化し、カスタマージャーニーマップ化していきます。

NPSやアンケートでの選択肢で点数を予め設定しておき、集計し、どの項目で点数が低いのかを抽出します。

またこの時点で、企業収益データも用意しておくことが好ましいです。顧客ロイヤリティと企業収益における相関関係を割り出すことが肝でもあるので、段階や時期など様々な軸での収益データを用意しておきましょう。

データを数値化した後、そのアンケート結果から浮かび上がってくる、顧客の行動をジャーニマップに落とし込みます。

そして改善するぺきポイントを見極め、改善策を取りまとめ、次の段階へ進みます。

改善点が見出せない場合は、調査方法を一度確認してみましょう。

 

②普及

カスタマーエクスペリエンス(CX)を実際に実行していくには、現場の理解と協力が必要不可欠です。無理強いをしてしまうと現場の反発や従来のサービスの質を落としてしまう原因になりかねません。

そうならないように、現場の社員や管理職への理解を促すアクションをしていきます。

現場を巻き込む

現場への協力と理解は、先述した「経営陣への説得・理解」で行ったことと同様です。

カスタマーエクスペリエンス(CX)の概要を学ぶ勉強会やカスタマージャーニーマップを作成してみるワークショップ、アンケートの結果を共有する場などを、実際の現場の社員がカスタマーエクスペリエンス(CX)を「自分ゴト化」するために、設計します。

またこの段階で、実際に行っていく内容が明確にかつ実施可能レベルにまで落とし込めていると良いです。

ただ、全ての店舗において、画一的なカスタマーエクスペリエンス施策を作ると抽象的なものになりがちなので、実際の細かい施策立案及び実施は現場の管理職や、エリアマネージャーなどに権限を移譲する場合もあります。

施策の実施と改善

現場での理解を得る段階を経て、ようやく実際に現場でカスタマーエクスペリエンス(CX)施策を打ち立て、実施し、改善するサイクルを回す段階へ移行します。

カスタマーエクスペリエンス(CX)の施策は『CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略―顧客の心とつながる経験価値経営』によると4つに分類されます。

⑴現場社員による施策/⑵現場に近い組織による施策

現場社員による施策は、実際に接客をする社員による施策です。現場社員による施策は、ある程度の接客方針を掲げるとともに、ある程度の権限を認めることが必要になってきます。

なぜなら、権限がない状態では、顧客ごとの対応ができず、画一的なサービスとなってしまうからです。

「上長に確認いたしますので追ってご連絡いたします」と言うものが際たる例でしょう。

その場で、技術的にでき、予算的にも問題がないことの対応を接客対応中のリアルタイムで返すことができれば、カスタマーサポートへの印象は好印象になる可能性が高まるのです。

もちろん権限移譲は、トラブルの原因にもなりますので、逐一問題がないかをチェックする必要があります。

管理職による定期的なチェックと、それに対応するマニュアルの改善など、現場社員のカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上させる改善は欠かせません。

現場社員による施策を実施していく中で、現場に近い組織による施策はセットで考えます。

先ほどの現場社員の施策実施の定期的チェックがそれに当たります。

現場社員の顧客対応を定期的にチェックし、トラブルがないか、そして完了させているかを観測します。

この完了させているかが大切です。どのような形であれば、対応を完了させているか(クローズド・ループ)を確認してください。

ここは、トラブル対応が満足いくもので完了した顧客は、クレームを入れない顧客よりもリピート購入の割合が高いとされる「グッドマンの法則」という理論に基づいています。

必ず顧客対応を完了しているか定期的に確認していきます。

⑶経営判断を必要とする施策

現場では判断できない規模・予算の施策の意思決定は、経営層が意思決定する必要があります。

例えば、全社レベルでのソフトウェアの導入や廃止、料金変更などです。

カスタマーエクスペリエンス(CX)施策を実施していく中で、浮かび上がってきたデータや仮説を経営陣が意思決定することは、現場社員のモチベーションを維持するだけでなく、より会社としての本気度を示すことができます。

⑷カスタマーエクスペリエンス(CX)自体を商品・サービス化

最後の施策は、カスタマーエクスペリエンス(CX)施策を商品・サービス化したものです。

例えば、オリエンタルランドが提供する「シェフミッキー」が該当します。

顧客が感動するような体験を盛り込んだサービスは、高い料金設定だとしても、購入者数・リピート数ともに高水準となります。

ただし、カスタマーエクスペリエンス(CX)の商品・サービス化は、顧客のまだ見えぬ「潜在ニーズ」を発見することが肝となるので、時間と検証は必要です。

③発展

カスタマーエクスペリエンス(CX)の導入と普及について見てきました。ここまでで、お気づきだと思いますが、カスタマーエクスペリエンス(CX)は主に「改善」に焦点を当てた施策です。

ただ、それだけでは他社との圧倒的な差別化をすることはできません。

クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』にでも出てくるように、「顧客の声を元にした改善」だけではたどり着けない領域があります。

したがって、カスタマーエクスペリエンス(CX)施策の発展段階では、改善だけにとどまらない”革新”へ取り組む必要があるのです。

これまでの施策実施によるデータ分析・仮説を盛り込んだプランやカスタマージャーニーマップの刷新などで、より潜在ニーズを捉えたサービス設計をしていきます。

本気で取り組むカスタマーエクスペリエンス(CX)の威力は絶大

カスタマーエクスペリエンス(CX)の概要と実際の実践方法をご紹介してきました。

本気のカスタマーエクスペリエンス(CX)の威力は絶大です。

スマートフォンの普及及びSNSの普及は、顧客の感動と共有のスピードとリーチ数を拡大させています。

性能や質のコモディティ化する中、顧客の心理・感情への価値提供はあらゆる企業に必要とされます。

ぜひカスタマーエクスペリエンス(CX)を取り入れ、顧客ロイヤリティの高い商品・サービスの開発・改善を目指しましょう。

 

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